★首相・菅義偉は細かな各論的政策を矢継ぎ早に繰り出し、各閣僚にも幾つかの課題を与え、仕事をすぐにスタートさせた。それぞれの仕事は国民生活に直結するものばかりで、携帯電話の料金値下げが首相のいの一番のやるべきことと国民は驚いたが、料金が下がることに誰も不満はない。つまり消費税を下げることに国民の信を問うと同じ理屈で、だれも反対などしない。

★一方、党内外の保守派は、安倍政治の継承をうたいながら安全保障に積極的発言がないことに失望している。11日、前首相・安倍晋三が「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針」についての談話を発表し菅政権に委ねるとしたものの、政権は積極的な対応をしていない。「安倍の実弟、岸信夫を防衛相に据えたのだから、そっちでいいようにやってくれというのが官邸のメッセージではないのか」と憤慨するのは自民党防衛族の1人。地球儀を俯瞰(ふかん)する外交を売り物にしていた前政権とは対照的である。

★これが菅流なのか。自民党ベテラン議員が言う。「派閥を持たず、政権基盤が弱い首相は思い通りの人事もできず、今は解散時期まで党からいろいろ言われている。今は国民の信頼を得るために、国民視点の政策を繰り出し支持率の高止まりを狙っているのだろう」。つまり各方面から飛んでくる矢を防ぐために、国民の人気を維持して解散の主導権を取ろうというわけだ。別の議員が言う。「首相は『仕事がしたい』とすぐに解散はしないとしているが、行革を言い出したように元首相・中曽根康弘の政治や行革手法を参考にしている。2人は政権基盤がぜい弱、支持率は高いと類似点が多いが、その中曽根がやったのが86年6月の死んだふり解散だ。解散はしないといい、党も反対しているときに解散を打った。これで大勝。これを狙っている。時期はわからないが、任期満了まで待っていたら、引きずり降ろされる。その前に解散して信任を得て長期政権にする腹だ」。なかなか策士だ。(K)※敬称略